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いわゆる「おひとりさま」ですが、老後・死後の不安を解消する方法ありますか?(任意後見契約・死後事務委任契約ほか)

 

 親族が既に他界されていて独り身の方や、親族はいるけど迷惑をかけたくない方、いろいろ事情があり疎遠にされている方など、老後や死後のことを不安に思われたり、どうなるのだろうと疑問に思われている方いらっしゃると思います。いつ、判断能力が低下したり、自分の意思を伝えられなくなるかわかりません。そんな時、どうなってしまうのでしょう?また、亡くなった時に、お葬式や遺品整理などはどうなるのでしょう?

 

1.任意後見制度・任意後見契約

 任意後見制度とは、認知症や障がいなどで将来ご自身の判断能力が不十分になった場合に備えて、財産管理や介護サービス契約の締結などご自身に代わってしてもらいたいことを、自らが選んだ人と契約(任意後見契約)で決めておく制度です。

①任意後見人

 任意後見契約をして委任する相手のことを任意後見人といいます。任意後見人は、特に資格が必要ありませんので、自由に決めることができます。当然ですが、信頼できる方に頼みましょう。任意後見人は、親族、事実婚のパートナー、専門職に依頼するケースが多いです。

 親族にお願いする場合、自分の子供や弟、妹、甥・姪など、なるべく年齢の低い親族と契約しましょう。というのも、自分と同年代かそれ以上の親族にお願いした場合、いざ任意後見契約の効力が発生した際に、亡くなっていたり、対応できない可能性があるからです。

 また、他の親族にも任意後見契約を結ぶ旨を相談しておいた方が良いでしょう。後に揉めるケースが多いです。

 事実婚のパートナーにお願いする場合、お互いに任意後見契約を結びましょう。将来、どちらが急に判断能力などが低下するかわかりません。
 

②任意後見人になれない人

 任意後見人は、自由に決めることができるのですが、以下の人達は、法律でなれないことになっています。

  ⑴未成年者

  ⑵家庭裁判所で免ぜられた(やめさせられた)法定代理人、保佐人、補助人

  ⑶破産者

  ⑷行方不明者

  ⑸本人に対して訴訟中またはした人とその配偶者、直系血族

  ⑹不正な行為、著しい不行跡など任務に適さない事由がある人

③任意後見人にしてもらうことを決めましょう

 任意後見人が代わりにできること(代理権)は、契約で定めた範囲内のことです。

 「財産管理に関すること」と「療養看護に関すること」で、ご自身の希望がかなうよう、よく検討した上で、お願いしたい内容を決めましょう。その内容を代理権目録に記載します。注意しなければいけないのは、代理権目録に記載されていないことを、任意後見人は代理出来ないということです。

 よく、食事を作るといった家事手伝いや身の回りの世話などの介護、ペットの世話などお願いできるでしょうか?と質問されますが、これらは任意後見契約の対象外です。

 また、葬儀など、ご自身が亡くなられた後の手続きなども対象外です。亡くなられた後の手続きもお願いしたい場合は、後で説明する「死後事務委任契約」を締結します。

④任意後見契約の締結と効力発生

 任意後見契約は、公正証書で作成する必要があります。公証役場の公証人が作成し、登記もされます。当事者間で契約書を作成しても無効です。

 認知症の症状がみられるなどご自身の判断能力が低下したら、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任申立をします。この申立ができるのは、ご自身(本人)、配偶者、四親等以内の親族、任意後見受任者(任意後見人をお願いした人)で、ご自身の住所を管轄する家庭裁判所に申立てます。

 申立を受けて、家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、任意後見契約の効力が発生します。

 任意後見監督人による監督のもと、任意後見人による支援が開始されます。

⑤任意後見契約の種類

「即効型」、「将来型」、「移行型」の3種類の契約に分けられます。

⑴即効型
 ご自身の判断能力が低下し始めてはいるのですが、まだ意思能力があり、任意後見契約の締結が可能なときに検討されます。
 任意後見契約締結と同時に、任意後見監督人選任の申立をします。
 本人の判断能力をめぐってトラブルにもなりやすいので注意が必要です。

⑵将来型
 将来に備えて任意後見契約だけを締結します。
 任意後見契約を結んだことを知っていて、ご自身が判断能力が低下したことに気付く人が身近にいないと、任意後見受任者がそのこと気付かなかったり、ご自身が契約自体忘れてしまっているという可能性(危険性)があります。

⑶移行型
 一番利用されている類型です。
 任意後見契約と同時に、「見守り契約」や「財産管理等委任契約」などを締結します。

 「見守り契約」は文字どおり、任意後見受任者がご自身と定期的に連絡を取ったり面会して、健康状態や判断能力の低下などがないか見守る契約です。

 「財産管理等委任契約」は、判断能力はしっかりしていても、車いす生活や寝たきり、手が不自由でうまく字が書けないなど、預貯金の支払などの管理や諸手続きが困難な場合に、手続きを代理してもらうために契約します。

 任意後見契約では、ご自身の判断能力が低下してからでないと対応できませんが、「見守り契約」や「財産管理等委任契約」などを締結することにより、判断能力がある契約当初から継続して支援することが可能になります。

⑥任意後見制度のメリットデメリット

 任意後見制度では、ご自身で信頼できる人を後見人に選ぶことができ(法定後見制度では、家庭裁判所が選任します。)、契約内容も自由に決められるというのが最大のメリットです。元気なうちに、「どこの病院で診療したい」、「施設でケアを受けたい」など、ご自身の希望をもとに契約内容を決めることができます。財産管理も、ご自身の希望に沿って管理できます。

 もちろんデメリットもあります。一番にあげられるのが、任意後見人には、取消権がないということです。どういうことかというと、ご自身が悪徳商法などにひっかかり、不要な商品を買わされてしまった場合、任意後見人はご自身の行為を代わりにその行為を取り消して、なかったことにできません。法定後見制度では、後見人に取消権が認められているので、この場合、取り消してなかったことにできます。

⑦任意後見契約の終了

 ご自身または任意後見人が死亡・破産すると契約は終了します。

 任意後見人に不正行為がある場合など、家庭裁判所は解任することができます。

 任意後見契約を解除することもできます。
 任意後見契約の効力発生前であれば、公証人の認証を受け、ご自身または任意後見受任者はいつでも解除できます。
 任意後見契約の効力発生後は、家庭裁判所の許可を受けてご自身または任意後見受任者が解除できます。

2.遺言

 独り身の方や事情のある方が、財産の処分方法の希望がある場合、遺言により、ご自身の財産の処分方法を指定できます。自筆証書遺言では、発見されない可能性もあります。公正証書遺言で作成し、遺言執行者を必ず指定しましょう。そして、遺言執行者は、任意後見人をお願いするとき同様、なるべくご自身より若い方を選ぶようにしましょう。

 遺言執行者を選ぶに当たり、その方にはその旨お願いするとともに、遺言を執行するにも費用や手間がかかるので、お礼相当分が遺贈できる内容の遺言をしておくと良いでしょう。きちんとしておかないと、せっかくご自身のために動いて頂いた方に、不要な負担をかけてしまうこともあります。

 葬儀や納骨などについては、公正証書遺言の中に書くことは可能ですが、希望どおり実現が難しい場合もあるので、後で説明する「死後事務委任契約」を締結した方がよいでしょう。

3.相続人がいない場合

 相続人がいない場合で、特に遺言書などで遺贈など財産の処分方法の指定がない場合、遺産は最終的に国庫に入ります。

簡単に説明するとこのとおりなのですが、実際の手続きは大変です。

 相続人がいない方の中でも特に、身寄りのない方がお亡くなりになられた場合、ご遺体の引き取りや死亡届の問題が生じます。行政機関で調査して、遠い親戚に引き取り依頼などの連絡がいく場合もあります。それでも見つからない場合、役所が近隣住民や地域の民生委員に死亡届の提出をお願いすることになります。

 遺品の整理や手続きなどは、相続人でないと出来ないのですが、相続人がいませんので、亡くなられた方に対する債権者などの利害関係人または検察官が相続財産管理人(遺産の管理や清算などを行う人)の選任を家庭裁判所へ申立てします。

 相続財産管理人の選任は、申立てがない限りされませんので、遺された物は、そのままの状態になってしまいます。借家に住まれていた場合など、大家さんはとても困ってしまいます。その他関係があった方も、同様に困ってしまうことでしょう。

 この申立てには、亡くなった方の出生から死亡まで全ての記載のある戸籍謄本などと、相続人がいないことを証明するために亡くなった方の親や兄弟の戸籍謄本などを全て取得し、添付する必要があります。その他にも必要書類があります。戸籍謄本など書類の取得には、結構な手間と費用を要します。また、申立て自体にも費用が当然かかります。さらに、予納金といって、相続財産管理人の報酬にあたるお金、数十万~100万円程度をあわせて納める場合もあります。これらの費用は、全て申立人が負担します。

 結構な費用と手間がかかる申立てをして、メリットのある利害関係人がいれば良いのですが、それほど亡くなられた方に財産がない場合、申立ては通常行われません。検察官も同様です。

 相続財産管理人の選任は、申立てがない限りされませんので、遺された物は、そのままの状態になってしまいます。借家に住まれていた場合など、大家さんはとても困ってしまいます。その他関係があった方も、同様に困ってしまうことでしょう。

 相続財産管理人が選任されたとしても、3回官報への公告手続きなどが行われ、最終的に手続きが終了するまでに1年以上かかります。

 なかなか一筋縄ではいかないのです。

4.死後事務委任契約

 死後事務委任契約は、ご自身がお亡くなりになられた後、親族への連絡、葬儀、火葬、納骨、遺品整理など、第三者に委任する契約です。本来、これらのことは、相続人が行うのですが、相続人がいなかったり、頼める相続人や親族がいないなどの状況で利用されています。

①委任する死後事務の主な内容

死後事務委任契約の内容は、当事者が自由に決めることができます。

⑴葬儀・埋葬にかかわること
 希望する葬儀方法や埋葬方法など、その内容を契約書でしっかり決めておくことにより、希望に沿ったエンディングを迎えることができます。

⑵親族への連絡
 遠方にいる親族などに連絡してもらいます。連絡先などをまとめておくことも必要です。

⑶医療費・介護施設利用料の支払
 入院していた病院や利用していた介護サービスの支払事務を委任します。

⑷役所等への届け出
 死亡届や年金などの届け出をしてもらいます。

⑸各種解約手続き
 電気、水道、ガス、電話、インターネットなど、いろいろ利用契約していたものの支払や解約をしてもらいます。

⑹遺品整理に関すること
 身の回りの物の処分などをお願いします。

②契約方法

 法律上、特に決まりはありませんが、本来相続人しかできない事務を委任したり、後のトラブルを少しでも避けるためにも、公正証書で契約するようにしましょう。実際、ご自身がお亡くなりになられた後、受任者が死後事務を行うにあたり、公正証書の契約書を提示しないと受け付けてもらえないことがほとんどです。

 また、当然、受任者には報酬や費用が発生します。報酬金額や支払方法についてしっかり明記しましょう。相続人や親族がいる場合、金銭面や遺品の整理方法について、トラブルになる可能性が非常に高いです。報酬については相続分に影響が出ますし、遺品などは形見わけなど、心情的なトラブルに発展します。受任者と親族などとのトラブルを避けるためにも、死後事務委任契約を締結する旨を親族に話せる場合は、なるべく伝えておくのも良いかもしれません。事実婚や同性婚の場合、特に多いようです。

むすび

 最近は、終活など、ご自身がお元気なうちに整理や準備をされている方が増えています。今回お読みいただき気付かれたと思いますが、これらは一部の資産家だけに当てはまる話ではありません。

 元気なうちでないと出来ないこともありますので、気になる方は、早めに準備をしましょう。

 ご検討されている方、不安やご不明な点がある方は、ぜひご相談ください!

 最後までお読みいただきありがとうございました!!


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