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自筆証書遺言と公正証書遺言

自筆証書遺言と公正証書遺言

 

 今回の内容は、一般的に利用されている、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」のどちらがよいのかと考えてらっしゃる方のご参考なれば幸いです。

 

家庭裁判所の検認手続きってなに?

 遺言書の説明を読むと、必ず、「家庭裁判所の検認」とか「開封」とか出てきています。よくわからないけど、家庭裁判所でなにか面倒くさい手続きをしなくてはいけないのだろうと流して読まれている方もいると思います。その面倒くさそうという理解、正解です!

 

  

 簡単に説明させていただきます。

  

 原則、「公正証書遺言」以外の遺言書は、家庭裁判所で検認(開封)という手続きを踏まないと、有効な遺言書として手続きに使用できません。封がしてある遺言書は、その際に開封しなくてはいけないので、家庭裁判所の手続き前に勝手に開封してはいけません。

 

 まず、相続が開始した後、遺言書を保管している人または発見した相続人が、亡くなった方が最後に住んでいた(住民登録をしていた)住所を管轄する家庭裁判所に、申立書を提出します。申立書提出にあたり、収入印紙代800円と郵便切手代がかかります。また、亡くなった方の出生から死亡までわかる全ての戸籍謄本などと相続人全員の戸籍謄本が必要です。

 

 申立書に不備がなければ、しばらくすると家庭裁判所から、遺言書を検認(開封)するので、いついつ(検認期日)に集まってくださいと各相続人に対して連絡がきます。

 

 検認期日、遺言書を保管している人が家庭裁判所に遺言書を持参します。そして集まった相続人の前で裁判所の書記官などが開封し検認します。

 検認が終わると、またその証明に150円の収入印紙代がかかります。

 

 ざっくり説明しましたが、遺言書を有効にするために、相続人にとっては以上のような面倒な手続きが必要です。

  

遺言書作成にあたって

 どの方式で遺言書を作成するにしても、次にあげる4点は気にして作成した方が良いでしょう。

  

 

 ①財産の指定

   全財産誰かにあげるのであれば「全ての財産」で構いませんが、特定の財産をあげたい場合、例

  えば、不動産であれば、所在・地番・家屋番号、預貯金であれば、銀行・支店・種類・口座番号・

  口座名義の特定が最低限必要です。

   財産は、正確に特定された記載がないと、手続きが取れません。ということは、その財産につい

  ては、相続人間で協議して分けることになります。

  

 ②事情の変更

   遺言書を作成した後、財産をあげたいと思った人が自分より先に亡くなると、その財産について

  は、遺言書で分割の指定のない財産になってしまいます。その際には遺言書を書き直せば良いので

  すが、ご自身が遺言できない状態になっているかもしれません。遺産の分割を指定するに事情があ

  るのであれば、第二順位、第三順位なども踏まえた遺言書を作成した方が良いでしょう。

  

 ③受け取る方の事情

   この財産は、誰某にあげたいと思っても、受け取る方に取っては負担が生じるという場合があり

  ます。

   例えば、兄弟姉妹以外の相続人は遺留分がありますので、財産を受け取った人に対し、遺留分侵

  害額の請求が来る可能性があります。受け取ったものが現金で、請求金額に足りていれば問題ない

  かもしれませんが、受け取った人が自身の財産を切り崩して支払うケースも考えられます。また、

  受け取った物によっては、莫大な維持費や管理費がかかってしまうものもあります。

   ご自身の事情によって、このあたりを考えたり相談した上で、遺言の内容を考えた方が良い場合

  があります。

  

 ④遺言執行者の選任

   遺言執行者が選任されていない場合、遺言書の内容を実現するには、原則、相続人全員が行うこ

  ととなります。相続人全員で行わなければならないため、遺言の内容に納得いかない相続人が一人

  でもいると、遺言内容を実現するための手続きができません。仮に、相続人全員が協力するとして

  も、全員一緒に住んでいれば、少しは何とかなるかもしれませんが、離れた所に住んでいると、手

  続を進めることはなにかと手間がかかり大変です。

   手続きをスムーズに進めるためにも、特定の財産を誰かに相続させたりや遺贈する場合は、遺言

  執行者は選任しておいた方が良いでしょう。

自筆証書遺言と公正証書遺言の比較

 通常、遺言書を作成するにあたり考えるのが、「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」どちらで作成するのかです。メリット・デメリットを比較してみましょう。

  

 それぞれ、メリットデメリットありますが、おおまかな違いは次のような感じではないでしょうか。

  ①作成時・・・「自筆証書遺言」の方が手間と費用がかからない

  ②有効性・・・「公正証書遺言」の方が安心

  ③死亡後・・・「公正証書遺言」は、検認手続きがいらない

 

 有効性についてふれましたが、誤解があるといけないので説明させていただくと、要件をみたしていれば、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の法的有効性は一緒です。

 「公正証書遺言」の場合、公証人という法律の専門家が関与するので、不備によって無効になるリスクはありませんし、自分だけでは気付かなかったこともフォローしてもらえるため、有効性について安心ということです。

 

 また、遺言書は、後に作成されたものが有効な遺言書となります。一生涯で一通しか作成できないということはありません。何度でも作成できます。一度「公正証書遺言」で遺言書を作成したからといって、その後もずっと「公正証書遺言」で作成しないといけない訳でもありません。

 

 たまに、先に作成された「公正証書遺言」とその後に作成された要件を満たした「自筆証書遺言」が出てきた際に、「こんな手書きのよりも、公正証書の方が有効ですよね?」と聞かれることがあります。遺言書は、要件を満たしていれば、その効力に優劣はないので、後に作成された遺言書が有効となります。このケースは、後に作成された「自筆証書遺言」をもとに、相続手続きを進めることとなります。

 

 話がそれましたが、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」どちらを選択するかは、それぞれの事情を踏まえた上で、メリットデメリット比較しながら決めるのが望ましいです。

 「公正証書遺言」の作成をご希望する相談を受け、よく話を伺うと、「自筆証書遺言」で十分なケースもあります。実際には、その逆の方が多いですけど。

むすび

  

 せっかく遺言書を作成するのですから、ご自身が亡くなられた後の心配などが解決できるものにしたいですよね。ましてや、無効になったり発見されないのでは無駄になってしまいます。遺された親族や関係者のために遺言書を作成するのでしょうから、遺言書の作成を検討されている方やすでに作成したけど不安がある方は、是非お気軽にご相談ください。

 

 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!

   

   

   

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