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将来のことを考えて…(見守り契約・財産管理等委任契約)

 

 いろいろ考え任意後見契約を結ぶことを決め、「これで体力が落ちたり、身体が不自由になっても安心。」と思っていたら、「任意後見契約は、ただ動けないというだけの場合は開始しませんよ。」などと言われ、「自分の体力が衰えてきたときにはどうすれば良いのだろう?」「そもそも、判断能力が落ちてきたって、どうやって気付いてもらえるの?」と、また新しい不安や疑問が生まれた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

 このような不安を解消するために、任意後見契約と一緒に締結されるのが、「見守り契約」と「財産管理等委任契約」です。

 

1.見守り契約

 見守り契約とは、任意後見が始まるまでの間、定期的にご本人に電話で連絡を取り、併せてご本人のご自宅などに訪問して面談することにより、本人の健康状態や生活状況を確認して、任意後見を開始するかどうかを判断することができるようにするための契約です。家族や友人が近所に住んでいて、定期的に会っていれば、健康状態や判断能力の低下に気付けますが、そうでない場合、状態の変化になかなか気付くことができません。

 ご本人だけでなく、遠方に住んでいる家族が、ご本人のために契約することもあります。

①契約の内容

 見守り契約の内容は、法律で決まりがありませんので、基本的には当事者で自由に決められます。

 ⑴電話連絡
   「毎月月初めに」など電話する時期や「月何回」などの頻度を決めます。

 ⑵面談
   「毎月何日」や「電話の際に訪問日を話し合って決める」など訪問日や訪問回数を決めます。

 ⑶契約期間
   通常、契約期間は1年契約を結び、自動更新されるようにします。

 ⑷報酬の金額やその支払方法
   報酬額、誰が支払うのか、振込などの支払方法を明記します。

 ⑸契約の終了事由
   任意後見が開始されただけでは、自動的に解約されませんので、解約事由を決めておきます。任意後見
  契約と一緒に見守り契約をした場合は、通常、任意後見契約が解除されると終了する旨入れておきます。

 ⑹その他
   健康状態が悪くなり入院した場合に、遠方に住んでいる家族や親族に連絡してもらうなどの内容も入れ
  ておくと、より安心です。

②見守り契約でできないこと

 見守り契約は、任意後見を開始するかの判断のための契約なので、以下のことは対応できません。

  ⑴身の回りのお世話
    面談での訪問時、買い物や片付けなど身の回りの世話は対応してもらえません。別のサービスなどを
   契約する必要があります。トラブルになりやすいので、契約上に身の回りの世話はしないことを確認し
   ている旨、あえて契約書内に書くケースもあります。

  ⑵判断能力が低下した後のこと
    判断能力が低下した後は、見守り契約では対応することができません。また、契約を更新することも
   できません。

  ⑶死亡後のこと
    お葬式、納骨、遺品整理などの手続きといった契約は、併せてお願いしたいというケースが非常に多
   いです。この場合は、別途、「死後事務委任契約」を結びます(別の記事でご紹介してますので、詳し
   くはそちらをご覧ください)。

②財産管理等委任契約

 判断能力はしっかりしていても、手が不自由で字が書けない、車いす生活、寝たきり状態などの場合、預貯金の払い戻しや支払い、医療契約、役所手続きなど、困難なことがあります。

 このような場合に、家族や信頼できる人に、生活に必要なこと、療養看護、財産管理などに関する事務について代理権を与える契約が財産管理等委任契約です。判断能力がしっかりしている場合、任意後見契約は開始しませんし、見守り契約では代理権がありません。

①契約内容

 契約内容は自由ですが、何を委任するのか明確にするため、契約書とともに「代理権目録」を作成して明記します。後のトラブルを避けるためにも、慎重に決める必要があります。

 代理権の例としては、以下のようなものがあります。

  ⑴不動産や動産等すべての財産の管理、保存

  ⑵ご本人名義の金融機関の預貯金に関する払戻し、預入れ、口座開設、振込依頼、解約及びすべての取引

  ⑶家賃、地代、公共料金の支払に関する手続き

  ⑷家賃、年金等の受領手続き

  ⑸生活に必要な送金手続き

  ⑹保険契約の締結や解除

  ⑺行政手続き

  ⑻医療契約、入院契約、介護契約、施設入所契約などの締結、変更、解除、支払に関すること

②注意点

 信頼できる相手に委任したとはいえ、トラブルが起きやすい契約です。うまく活用するためにも、これからあげる点についても検討することをお勧めします。

  ⑴公正証書で作成する
    費用はかかりますが、公正証書で作成しましょう。金融機関をはじめ、信頼性が高まります。
    公正証書で作成していない場合、代理人による対応を拒まれることがあります。

  ⑵任意後見契約と同時に契約する
    財産管理等委任契約を結んだ後、委任者(ご本人)の判断能力が低下すると、受任者の監督が十分に
   できなくなる恐れがあります。そのような場合に、すぐに任意後見契約へ移行できるよう、同時に結ん
   でおきましょう。
    財産管理等委任契約だけですと、判断能力が低下した場合に、成年後見制度を申し立てることになり
   ますが、審判が下りて開始されるまでに数か月以上かかってしまいます。

  ⑶印鑑、通帳は預けっ放しにしない
    印鑑や通帳は、必要な時にその都度渡し、預り証を受け取りましょう。そして、その手続きが完了し
   た場合は、報告とともにその都度返却してもらいましょう。トラブルを未然に防ぐことにもなります。

むすび

 今回ご紹介した契約は、基本的には、任意後見契約と一緒に結んで、任意後見契約ではサポートできない部分を補填するためのものです。

 それぞれのご事情を熟慮した上で、任意後見契約と併せて契約するかどうか決めると良いでしょう。
 特に、単身者の方、お子様がいらっしゃらないご夫婦、事実婚の方、同性婚の方などは、利用することにより、安心感が増すと思います。

 任意後見契約含め、ご検討されている方、心配、ご不明な点などある方は、ぜひご相談ください。


 今回もご覧いただき、ありがとうございました!
 

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