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終活 安心の対策を!

終活 安心の対策を!

 ご自身の老後や死後、誰にも迷惑をかけたくないとか遺された大切な人達が困らないようにと、生前できる方法や制度がいくつかあります。遺言書を書いたり、任意後見契約を結ぶなどありますが、これらを利用するにあたり、ご自身の環境(生活状況や周囲の人達)にとって、どの制度を利用するのが安心なのか、いくつかの制度を組み合わせることも含めよく検討して利用するようにしましょう。

 せっかく対策をしても、実際には不十分で、目的が達せれなかったり、思い描いていたことと異なる結果を迎えることもあります。

    

こんなこともあります

 ここで実際に私が経験した、ちょっと考えさせられる事案をご紹介します。

   

 7~8年くらい前になりますが、知人から、相続手続きで困っている人がいるから相談にのって欲しいと頼まれ、Aさんという方を紹介されました。

 

 早速、Aさん宅を訪問し、事情を伺いました。

 

 数か月前、自分が住んだこともない市役所から、固定資産税の支払の連絡が来たそうです。何が何だかわからないAさんがその市役所に問い合わせると、半年以上前に、Aさんの叔母に当たるBさんが亡くなり、固定資産税が未払いとなっていたため、相続人の一人であるAさんに通知書を送ったということでした。

 

 Aさん(60代後半)は、子供の頃にBさん(享年80代)に遊んでもらった記憶がありましたが、それ以来50年以上会っていなかったそうです。Aさんは、Bさんに好印象が残っていたため、軽い気持ちで、死後の整理など何とかしてあげようと、市役所に対して自分が手続き関係を引き受けると回答しました。ただし、50年以上会っていないので、叔母さんがどこでどのような生活をしていたのか全く分かりません。市役所から、Bさんに任意後見人がいたので、詳しい事情はその方が知っていると思うので聞かれると良いでしょうと、連絡先を教えてもらったそうです。

 

 Bさんの任意後見人を訪ねると、ある司法書士だったそうです。話を聞くと、Bさんは、生涯独身で、数十年前から親族との連絡を一切絶っていたそうです。Aさんは、その司法書士に今後の手続きのお手伝いをお願いしたのですが、相続人が多い上に複雑なので手伝えないと断わられたそうです。そして、Bさんの自宅のカギや通帳などの貴重品など、預かっていた物をAさんに引き継いだそうです。

 

 Bさんは、古い小さなマンションを所有していて、銀行口座も複数ありました。Aさんは、これらの整理や解約を自分でしようと動き出したのですが、どこに行っても相続人全員の同意が必要となる言われたそうです。ところがAさんは、相続人をどう調べたら良いのか分かりません。そこで、知人から私を紹介されたそうです。

 

 

 任意後見人をしていた司法書士が、相続手続きなどを断ったということで、嫌な予感がしながらも、早速、戸籍謄本などを集めて相続人の特定に取り掛かりました。

 

 戸籍を集めていくと、Bさんのお母様(Aさんの祖母)は、再婚されていて、Bさんには、Aさんのお父様を含め、両親を同じにする兄弟5名の他に、父の異なる(異父)兄弟も5人いることが判明しました。ほとんどのご兄弟が亡くなられていて、結局、戸籍謄本など全て(70通以上ありました)を揃えるのに、半年以上かかりました。結局相続人は16人で、異父兄弟方と一部の甥姪とAさんは面識が全くないとのことでした。

 

 まず、Aさんを除く全ての相続人に、事情を説明した手紙を送りました。Bさんがお亡くなりになったこと。相続人に該当すること。手続きが必要なこと。それには相続人全員の同意が必要なことなどが記載されています。当然、一回送付しただけでは、封を開けていただけなかったり、不信がってご連絡を頂けない方もいらっしゃったので、折り返しの連絡がない方は、何度も送付しました。

 

 2ケ月程かけ、Cさんという相続人を除いて、他の相続人の方々と連絡を取ることができました。ただし、Bさんは数十年に渡り、親族との連絡を絶っていたため、ほとんどの方がBさんを知らない上に、相続人に該当する関係性も知らないため、なぜ自分がBさんの相続手続きに関わらなければいけないのかと、当然の反応をされる方がたくさんいらっしゃいました。それぞれの方、電話で何度も長時間に渡り説明(記録を取ったら、延べ40時間以上でした)するうちに、みなさん協力して頂けることになりました。ただ困ったことに、誰もCさんの連絡先を知らないとのことでした。

 

 相続人を調査している間、Aさんも何度かBさんのご自宅を訪問し、必要な手続き関係がないか調べて頂きました。そんななか、Aさんから私に、Bさんが今どこのお墓にいるのか分からなくて気がかりだと連絡がありました。まさかの連絡内容に驚いたのですが、とりあえず任意後見人だった司法書士に聞いてみてはとアドバイスしました。

 そして、さらに驚いたのですが、Bさんのお骨がまだ斎場に保管されたままだったことが発覚しました。Aさんがそれを知り、問い合わせたところ、相続人全員が捺印した書面がないと、お骨を渡せないということでした。本当は、斎場側も、保管するのに困っていたところ、やっと連絡が来たと思ったらしいのですが・・・。

  

 これは、ますます急がなければいけないと、他の相続人の方々に、お骨の話しをすると、みなさん揃って遺産はいらないから、急いでなんとかしてあげて欲しいとおっしゃられました。そこで、みなさんもCさんと連絡を取れるよう、Cさんのご自宅へ行っていただいたり、いろいろご協力頂いたのですが、どうしても連絡がつきません。

 

 それからしばらくしたある日、Cさんのご子息のDさんから連絡が来ました。海外出張が多く、たまたま実家の様子を見に寄った際に、私から何通も手紙が来ていることに気付いたそうです(ご訪問いただいた相続人の方が、封書が目立つよう郵便受けを整理してくださったそうです。)。そこで分かったのですが、Cさんは重度の痴呆になり施設に入られていて、行政書士に後見人をお願いしているとのことでした。Bさんの事情を知ったDさんは、後見人に連絡を入れておくので、申し訳ありませんが連絡の上ご説明お願いします、と後見人の連絡先を教えてくださいました。

 

 ようやくお骨の問題が解決するとホッとし、急いでその後見人に連絡し事情を説明しました。ところが、その成年後見人は、Cさんに法定相続分ではなく、16等分した相続分がもらえないと協力できないという回答をしてきました。ちなみに、Cさんの法定相続分は64分の1でした。Aさん含め他の相続人の方にその旨を報告すると、みなさんお怒りになられ、ご子息のDさんにも、後見人を説得するようお願いしてもらったのですが、全く譲歩しませんでした。64分の1の相続分では、せっかく仕事をしてもほとんど報酬がもらえないと思ったのでしょう。

 

 相続人間で、16等分でも良いから早くお骨何とかしてあげましょう、という意見と、感情論としてそういうこと言ってくるのが許せないという意見が交錯しました。せっかく団結している15人までバラバラになっては困るので、遺産分割調停をすることになりました。ところが、Cさんの成年後見人は、調停にも出席せず進展しませんでした。

 

 すると業を煮やした相続人の中から、Cさんが亡くなるのを待った方が早く解決するのではないかとうという声が上がりだしました。「Cさんも元気だったら我々と同じ考えだろうけど、あの強欲な後見人がいる限り時間ばかりかかってしまう。かと言って、後見人も解任できないし、その間、Cさんが困るのでどうにもならない。この先、時間や費用をかけて何回も裁判所に行くのも大変だし。」と、大半の方があきらめてしまいました。

 

 

 結局、遺産分割協議は中断し、Bさんのお骨も斎場に残されたままです。私への依頼も一旦終了しました。無力さと無念さを感じたのを忘れません。

 

 

  

 このような事例は、珍しくないと思います。結果的に、生前の任意後見だけなく、死後のことまで対策していなかったため、相続人や親族だけでなく、他人にも迷惑がかかってしまっています。斎場だけでなく、Bさんのマンションも管理面などで支障をきたしているでしょう。生前、Bさんにこのようなことを想定し、死後事務委任契約など、きちんとアドバイスをできる人がいれば、15人の相続人の方も巻き込まれなかったかもしれません。少なくとも納骨までは無事に済んでいたはずです。Bさんも不本意でしょう。

 

むすび

 「こんなこともあります」のように、相続人がいても、人数が多かったり疎遠だったりするとなかなかまとまらないことは多々あります。ほとんどの相続人が一致団結していても、一人の相続人(この場合は、その代理人の後見人(行政書士)ですが)が反対すると、遺産分割協議も成立しませんし、その他ほとんどの手続きもできないのです。この時はたまたま、遺産分割協議に応じない相続人は一人でしたが、通常、これだけ相続人がいたら、もっと反対する相続人が出て来ても不思議ありません。

 

 また、今回ご紹介したケースとは違いますが、借家に住まわれている身寄りのないご高齢者がお亡くなりになられた場合、荷物が残ったまま処分できず、次の賃貸もできず、大家さんがお困りになられるというケースが珍しくないそうです。

 

 おひとりさまだけでなく、親族と疎遠、事実婚、同性婚など、さまざまなご事情を抱えられている方いらっしゃると思います。先々の事で不安がある方や気になった方は、どのようなことが起きそうか、一度を整理して考えられても良いかもしれません。

 

 生前整理や終活は、もちろんご自身のためなのですが、遺された方への影響も想定した上でされると、本来望んでいるエンディングが、より実現されると思います。

  

 ご自身のご希望を叶えるためにも、不安や疑問がありましたら、ぜひご相談ください。

 

 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

 

    

    

 

 

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